なぐものCHOTお話しブログ

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カテゴリ: 意見

現在のウクライナ情勢と今後の展望について私見を書きます。

まず、これまでの流れですが、よく言われるようにウクライナとロシアは親戚国家です。
しかしウクライナは歴史的経緯からロシアを信用していません。かといって西側諸国も信じていません。理想的にはウクライナはウクライナでやっていきたいのですが、現実そうはいかないので、ロシアに近づいたり西側に近づいたりしました。ただ、近づきすぎて飲み込まれないように、どちらに近づくにせよ距離をとってきました。
そのおかげで、ロシアにとっても西側にとっても、緩衝地帯になっていました。

しかしロシアとしては、旧ソ連の一員で民族的にも親戚であるウクライナは、本来自分のほうにあるべき国だと思っています。プーチン大統領はロシア帝国のピョートル大帝を目指し、大ロシアの復活を求めてウクライナが半分西側を向いていることに不満を持っていました。
逆にウクライナとしてはその魔の手が怖い。ゼレンスキー大統領は一気に西側接近の政策をとりました。ロシアに従属するよりは西側につくほうがウクライナにとって幸せだと考えたのでしょう。もちろん西側は歓迎します。

それを黙って見ていられるプーチンではなく、このままゼレンスキーが大統領なら西側に行ってしまう、そうなれば西側の勢力がロシア国境まで及んでおびやかされると考え、西側寄りのゼレンスキー政権を倒してロシア寄りの政権、理想的にはウクライナをベラルーシのような国にしようと、侵攻を開始しました。

元々ウクライナの軍事力はロシアに遠く及びません。NATOがウクライナを支持することはロシアの予測の範囲内でも、NATO諸国も一枚岩ではありません。ドイツのようにNATOやEUの中心的な国でありながらロシアにエネルギーの多くを依存する国もあります。トルコのようにロシアと親しい国もあります。ロシアの誤算は、NATOがウクライナ支援やロシアへの経済制裁を強化したとしても、大規模な支援の話は各国の意見がまとまらず、もたもたしている間に素早くウクライナの政権を潰せると読んだことです。

ところが多少の温度差はあってもNATOは一気に結束しました。それだけロシアを恐れていたからです。たとえるなら、仲間同士で喧嘩ばかりしている地球人が、いざ宇宙人の艦隊が近づいてきたら瞬時に喧嘩をやめて地球防衛に結束するような感じです。
予想以上のウクライナの抵抗とNATOの支援によって、一気にウクライナを支配するもくろみは失敗しました。首都キーウへの電撃作戦がお粗末だったことも大きいでしょう。ロシアは戦略を変えて東部や南部からじっくりと、得意の物量作戦で押し切る方針に変更しましたが、それにも失敗して大きな痛手を受けました。

それでもまだ、ウクライナ領のかなり広大な地域を占領しています。ウクライナは、ロシアが疲弊したすきにこの領土を取り戻そうと、今年の6月から大規模反攻作戦を実行しました。ですが物事はウクライナの思い通りにもいきません。大規模反攻作戦の準備に予想以上の時間がかかり、その間にロシアが強固な防衛線を構築。これを一気に突破しようとしましたが失敗し、今度はウクライナが痛手を受けました。ウクライナもここで一気呵成に攻める作戦から損害を抑えてじっくり攻める作戦に転換、ロシアの補給ルートを狙って一歩ずつ前進する方針になりました。現在、ウクライナが押し気味でロシアの防衛線をようやく突破しつつあるものの、航空優勢がないこと、もともと兵員がロシアよりも少ないので損害が大きくこたえること、ロシアの旧式兵器の物量がすさまじいこと、人海戦術も侮りがたいこと、戦争の長期化によってウクライナを支援しているNATO諸国も疲弊しはじめていることから、戦線が思うように進みません。
ウクライナの味方をしている国は民主主義国なので、「ウクライナ支援よりも自分の国を優先しろ」という世論が高まると政権は逆らえずに支援に消極的になります。ロシアの狙いどころはそこにあります。

ウクライナに圧倒的な支援をしてきたのはアメリカです。そのアメリカも世論が分かれ、ウクライナ支援をいつまでも続けられない状態です。特に次の大統領選挙でトランプが返り咲けば、一気に支援を引き上げる可能性があります。

また、アメリカは主敵をロシアよりも中国に定めています。ウクライナ支援で疲れすぎると、中国が台湾に侵攻したときに防げなくなります。台湾有事の際、アメリカ軍が現地に向かうのは主に海軍や海兵隊ですが、台湾への武器支援は陸軍兵器が大量に必要になります。もちろん財政負担も莫大になります。アメリカは中国と戦う余力を残さねばならないため、ウクライナ支援に全力は使えません。中露の両方が敗北すればアメリカを直接的におびやかす国はなくなるので、そのときには相当の疲弊が許容できるでしょうが、ロシアだけを相手に疲れ果てるわけにはいきません。

一方のヨーロッパ諸国は、中国は地理的に離れているので直接的な脅威はあまりなく、ロシアが主敵です。アメリカの立場ではヨーロッパに対して「俺たちは両方を相手にしてるんだ、片方だけ(しかも国力の小さなほう)を相手してるお前らとは違う。ロシアはお前ら中心でなんとかしろよ」と言いたいところでしょう。

そのヨーロッパ諸国にも支援疲れが見え始め、消極的になる国が出始めています。これはロシアの思う壺です。

それなら、今後はどうなるのでしょうか。ウクライナとロシア、どちらが勝つのでしょうか?

結論から先に言えば、私の予測は「ウクライナが一部の領土を取り戻したところで終わる」です。残念ながら、全土回復は難しいと思います。これは願望を排除した予測です。

理由は、ウクライナの全土回復までNATOのウクライナ支援が続かないと考えるからです。

なぜか。

私はさきほど、NATOが結束できた理由を、宇宙人の艦隊が近づいてきた時の地球にたとえました。これは裏返すと、宇宙人が地球まで攻めてこずに、太陽系の外側あたりで止まってくれることが確定すれば、地球人はまた仲間内の喧嘩を再開することを意味します。
おそろしいモノに自分たちが攻められるかもしれないから結束するのであって、攻められないことになれば結束する理由を失います。

スロバキアの選挙で親ロシア派、ウクライナ支援消極派が勝利したのも、いまさらロシアが自分たちの国境まで押し寄せてこないと判断した結果でしょう。ロシアの脅威が来ないのなら、これ以上の負担はできないと。スロバキアの国民が、ウクライナの今を「明日の我が身」と考えたなら支援を惜しまないはずです。

ゼレンスキー大統領もそれが一番の心配だから、「ウクライナが負ければ次はポーランド」と言うのでしょう。ポーランドはかつてソ連に攻められたトラウマがあるので警戒心が強く、だからこそ今度もウクライナ支援を特に積極的に続けてきました。

しかし、ウクライナとの戦争で疲れ果て、アルメニアさえ救えなくなっているロシアが、この先ポーランドを攻撃するなどまず考えられません。ウクライナと違ってポーランドはNATO加盟国ですから、ポーランドが攻められた時のNATOの対応は、ウクライナの時とは次元が違います。核兵器を使わないかぎりロシアの負けが100%確定しています。

アメリカをはじめとするNATO諸国は、もちろんウクライナの勝利を願っています。しかし自国のダメージの許容量には限界があります。多少のダメージを受けてでも達成しなければならない目標は、軍事的には「ロシアの軍事力をNATOの脅威でなくなるまで削ること」であり、また政治的には「ロシアを後悔させることにより、今後既存の秩序を軍事的にくつがえそうとする国にそれが割に合わないと思わせること」です。ウクライナを完全勝利させることはNATOの理想ではあっても、現実的には自国の受けるダメージとの天秤になります。
ことにアメリカは、それに加えて「台湾有事に対応できる戦力を温存すること」も絶対的な条件となります。

ロシアが勝つのは一番困りますが、あまりにも負けすぎると、プーチン政権が転覆します。西側諸国にとってプーチンは憎たらしい相手ではありますが、プーチンが倒れたあとがどうなるか分かりません。少なくともプーチンほど強力な求心力をもつリーダーは見当たらないので、権力が分散して対立し、ロシアが混乱する危険が高くなります。そうなると西側諸国はかえって「ロシアと話をしたくても誰と話せばいいのか分からない」状態になりかねません。

ロシアがそんな状態になれば、特にウラル以東、シベリアや極東は統治が機能不全に陥ります。そのときに影響力を拡大するのは中国です。中国がこの地域の莫大な資源を手に入れることは、アメリカにとって(日本にとっても)大きな脅威になります。強敵をやっつけて自分も疲れたところに、もっと強い敵が、さらに強大化して現れることになります。

西側諸国がプーチンのかわりに都合のいい大統領を連れてきてロシアを民主化したところで、ロシアの国民は西側の傀儡政権なんて支持しません。これまでの経緯を考えると、西側の傀儡政権よりは中国の傀儡政権のほうがまだマシ、ということになるでしょう。

結局、プーチンは西側にとって「必要悪」と認識されて、大統領選挙までは、プーチン政権が倒れない程度にしかロシアを倒さないと思います。もしも大統領選挙でプーチンが再選されるかどうか微妙になると、ロシア国民の望むリーダーがプーチンよりも西側に都合のいい候補ならばそちらが当選するよう圧力をかけるでしょう。たとえばナワリヌイ氏がロシア国民の支持を得られればベストなのでしょうが、そんなうまい話にならない限り、西側もプーチンのほうがマシだという判断に至るでしょう。現実的に考えるとプーチンが再選される可能性が大きいので、これを潰すとロシアが余計に手に負えなくなります。

ウクライナはロシアの脅威から身を守るために西側を選びました。仲間が増えることはもちろん西側も大歓迎ですが、ウクライナがウクライナの利益で選択したように、西側は西側の利益で選択します。

ウクライナが全土を回復することは西側にとっても理想で、協力したいでしょう。しかし、それを実現するためにはどれほどのコストが必要になるのか、仮に実現した場合にロシアで何が起きるのか、それが西側にとって果たして利益になる変化なのか、損失になるリスクがどれほどあるのか。きっと各国は必死に分析しているでしょうし、どこまでウクライナ支援を続けるかは、その分析結果と民主主義国としての民意の落ち着くところになります。
ウクライナがクリミアを含む全土を奪還し、ロシアの勢力を完全排除することは理想ですが、そこまで軍事支援を続けることは、コストが高く、リスクも高く、民意もついてこない、と思えます。

★ ★ ★

ところで、ここまでの文章を下書きした時点で、中東情勢が危うくなりました。ガザ地区のハマスがイスラエルに大量のロケット砲で攻撃し、イスラエルが30万人もの予備役を招集して大規模な反撃を始めています。アメリカも空母打撃群を東地中海に派遣しました。アメリカの空母打撃群は、ひとつあれば先進国1国ぶんの戦力と言われるほど強力です(多少盛ってるかもしれませんが)。

イスラエルがハマスを相手に戦うだけならば、この戦力はあまりに過大です。おそらく、パレスチナの他の勢力やその他の国々の動きを抑えるためでしょう。ハマスの背後にはイランがいると言われていますが、この紛争の鍵を握るのは「イランが参戦するかどうか」にかかっています。
軍事強国であるイスラエルがこれほどの兵力を動員したのだから、それと互角に戦える軍事力の持ち主は、イスラエルの敵対国ではイランしかありません。

もしもイランが参戦したら中東は大戦争になります。そして、アメリカはウクライナ支援を弱めてでもイスラエル支援を優先することになるでしょう。こうなるとアメリカの余力も限られてくるので中国が台湾を侵攻する絶好の機会となり、最悪、日本も巻き込んで第三次世界大戦になる危険があります。

ただ、私はそうなるとは考えていません。

イランが直接参戦しても、イランとイスラエルは国境を接していませんから、イランとしてはイスラエルと接するシリアの参戦が欲しいところです(間にイラクもありますがイラクは味方につく見込みがない)。しかしシリアのアサド政権もイスラエルと戦うには国家総動員が必要です。アサド政権を支援するロシアが弱っている今、イスラエルと全面戦争を始めれば、国内のクルド人勢力に回す力が足りなくなります。
イランがイスラエルを攻撃するなら、ミサイルを撃ち続ける形になるでしょう。もちろんイスラエルからの反撃もありますし、米空母もペルシャ湾近くにやってきて空爆などで応戦することになります。

アラブ諸国の中でも、サウジアラビアはイランを勝たせる義理がありません。アラブ諸国はさすがにイスラエルの味方にはならないにしても、イスラムの盟主の座をイランと争っているサウジは、イランの号令でイランを勝たせることに意味がありません。サウジやUAE、エジプトなどは中立するでしょう。

イランの参戦は中国にはチャンスを生みますが、ロシアは嬉しくありません。戦力不足のロシアは、イランと北朝鮮に支援を求めています。なのにイランがイスラエルのような強国と戦えばそれに手一杯になってロシアを支援できなくなります。アメリカの支援が手薄になるウクライナも困りますが、イランの支援を受けられなくなるロシアも困ります。そしてこれまで積極的にウクライナにつかなかったイスラエルですが、敵(イラン)の味方(ロシア)の敵(ウクライナ)は味方であり、味方(米)の味方(ウクライナ)は味方ですから、強国イスラエルをウクライナ側に押し込むことになります。
つまりイランの参戦をロシアは望まないでしょう。アメリカはイスラエル支援を惜しみませんが、やはり負担が重いことには違いありませんから、そのときはイスラエルにもっと明確にウクライナ支援をするよう働きかけると思います。

中国は台湾を攻めるチャンスが訪れます。しかし中国が台湾を攻めてアメリカと交戦状態になると、インドに背後を突かれる危険があります。もっともインドが中国を攻めた場合は、インドもパキスタンに背後を突かれる危険があります。そんな大混乱状態になれば、ウイグルやチベットの情勢も不安定になります。中国を敵とするアメリカやインドは、当然、ウイグルやチベットの争乱を煽るでしょうから、中国もそう簡単に勝算は立ちません。

今回、ハマスに武器を提供したり、イスラエルの裏をかくほど高度な作戦で協力したのは、おそらくイランでしょう。しかしイランが直接参戦するかどうかは状況を見ての判断になるはずです。イスラエルが本気の動員をしたり、アメリカが空母打撃群を派遣したのはハマスやパレスチナ勢力だけを相手にするには大きすぎる戦力なので、これはイランへの抑止力と思われます。
ハマスに先陣を切らせて場合によってはウクライナで疲れたアメリカの隙を見て…と様子見していたであろうイランも、今回は自重すると思います。つまりハマスを見捨てるということですが、イスラエルはハマスを徹底的に叩くでしょうから、それはそれでイランとしてはイスラエルの残虐性を強調して自国中心にイスラム諸国をまとめる機会に利用できます。

ハマス単独、あるいはパレスチナの他の勢力が少々呼応した程度では、本気で怒ったイスラエルを相手にすることはできません。ですがイスラエルもハマスを軍事的に叩くことはできても後の統治はまた別問題で苦労しますから、イスラエルも長期的に消耗します。それだけでもイランとしては利益を得ることになり、本気のイスラエルと全面戦争のようなリスクは取らないでしょう。
何か、ハマスは捨て駒に使われたような気がします…。

追記
イランの関与が明白になればイスラエルのほうからイランを攻撃すると言っているようです。
たしかにイスラエルのやり方やネタニヤフ政権の強硬さを考えるとあり得るでしょうが、イスラエルとて強国イランと全面戦争になればアメリカが頼りですし、イランのほうからイスラエルを攻めたら中立する国のなかにも、イスラエルのほうからイランを攻めたらイラン側に立つ国が出てきます。
これはアメリカにとって過大な負担となり中国を利するだけですから、大規模な戦争に突入するような攻撃はアメリカが止めるでしょう。
イスラエルにしてもメンツがあるので黙ってはいられません。ですが最大の支援国であるアメリカがもしも中国に敗れて衰えた場合、イスラエルは孤立無援ですから、やはり全面戦争は避けるでしょう。

【緊急投稿】
驚いたことに、プリゴジン率いる軍事会社「ワグネル」がロシアに対して反乱をおこした。少し前からプリゴジンは「ロシアの明智光秀になる」と噂されてはいたものの、本当にやるとは思わなかった。

ワグネルはロシア南西部のロストフを占拠し、モスクワに向けて北上。ほぼ中間地点にあたるヴォロネジも制圧したと伝えられる。これは兵法に非常にかなった動きで、まずウクライナ戦争のために物資を集積してあった拠点を占拠したうえで、一気呵成に首都攻略に出たのだろう。リスクも高いが底力で劣る軍が勝利を目指す方法としては、奇襲・急襲は正しい。

またプリゴジンはプーチン批判は控えて、ショイグ国防相などの排除を叫んでいる。これも、反乱を起こす場合には皇帝批判をせずに「君側の奸を除く」を旗印とする古典的な常套手段だ。

ここまでほとんど無抵抗でワグネルが進撃しているのは、ロシア国内のめぼしい部隊はウクライナに駆り出されて国内が手薄だからだろう。また、優秀な指揮官や兵員もウクライナに出ていると思われる。装備も兵士の数もその質も弱体なのだろう。そんなところに百戦錬磨のワグネルが襲いかかれば、逃げるか降伏するかのどちらかで、ワグネルは無人の野を行く快進撃を続けているのだろう。

ロシア政府がモスクワを防衛しようとすれば、方法はひとつしかない。いくらワグネルが強くとも少数であるうえ陸軍しかないという弱点がある。ロシア正規軍の空軍はまだ戦力があるので、まずモスクワへ向かう道路を遮断してワグネルの進撃速度を鈍らせたうえで航空戦力で攻撃。同時に、進撃中の本隊の背後の補給路を寸断して孤立させる。これができれば、いかにワグネルが精鋭でも手も足も出ない。

ただ、それはプリゴジンのほうも百も承知であるから、そういう攻撃の準備が整うまえにモスクワに突入しようとしているのだろう。「兵は神速を貴ぶ」の典型だ。

この反乱が成功するかどうかはわからないが、今後考えられるいくつかのシナリオをあげてみる。

①ワグネルがモスクワの手前で足止めされたら、ロシア空軍に叩かれ、補給路を断たれて殲滅される。こうなると反乱は失敗、プリゴジンは処刑されるが、それでもロシア国内に与える衝撃は計り知れない。

②ワグネルがモスクワに突入する。いくら主力がウクライナに行っていても首都防衛はおろそかにしてないはずだが、市街戦ともなればワグネルの実戦経験がものを言うだろう。プリゴジンがモスクワを手に入れた場合、プーチンを殺すことはたぶんしない(やればムダに敵を増やすだけ)。ただ、プリゴジンはワグネルの軍事力を背景に正規軍、政治の実権まで手に入れ、プーチンはプリゴジンの操り人形になる。次の大統領選挙は無理矢理でもプリゴジンが当選となり、ここで用済みで危険人物となったプーチンの命が危うくなる。

③ワグネルが勝ったらプーチン以前に身に危険が迫るのが、プリゴジンの標的にされているショイグ、ゲラシモフの2人。モスクワを守れないと判断すれば、プーチンを引っ張ってモスクワを脱出する。行き先の候補地のひとつはプーチンの出身地であり旧都でもあるサンクトペテルブルク。ここに臨時政府を作って抗戦するか。もしくはそれでも勝算がなければ、いざという時に中国に亡命しやすい東方に向かうか。

一番の大混乱になるのは③だろう。こうなれば、プーチンを選ぶかプリゴジンを選ぶかの二者択一ではなく、地方の軍閥や共和国が次々と独立勢力となってまさにロシア解体となる。プリゴジンは戦争の指揮官としては強くとも政治の才能はないんじゃないか。私の印象では、唐を滅ぼした「朱全忠」のようなタイプで、壊すことはできても作ったり整えたりすることはできそうにない。そうなると、朱全忠が作り出した中国の「五代十国」のような大分裂となる。

②のケースは、プリゴジンが「朱全忠」ではなく三国志の「董卓」になる感じだ。これもいつ「呂布」が現れるかもしれず、現れなくとも各地に「反プリゴジン勢力」が出現するだろう。ただ、私はプリゴジンは軍事指揮官の能力ばかりで政治の才能はないという勝手な前提で話しているが、意外にも政治力が高かったりしたら、それはそれでポスト・プーチン体制を作れるかも。

①の場合は当面プーチン体制が続く。ただ、ロシアは軍事的にも政治的にも大きく権威を失墜し、ウクライナ軍の反撃に弾みがつくだろう。西側諸国としてはロシアが大混乱になると戦争終結も誰と交渉すればいいのかわからなくなるうえ、交渉して条約などを結んでもいつまた体制がひっくり返って約束が反故になるかわからない。

こうしてみると、西側としては、ロシアには負けてほしいがプーチンは消えてほしくない。混乱の結果、プリゴジンとか、カディロフとか、そのあたりが核ボタンを持ったりするともっと計算不能になるので、とりあえずプリゴジンの反乱は失敗するほうが日本や西側としてはリスクが小さいと思われる。

プリゴジンの反乱は「速戦即決」できるかどうかにかかっている。できなければ、底力が違いすぎるので失敗するが、正規軍が狼狽し混乱して対応が遅れるなら成功の可能性もある。

広島のサミットにウクライナのゼレンスキー大統領が出席するというニュースはかなり驚きだった。

ゼレンスキー大統領は戦争中でも精力的に外交を行ってきたが、背景にはロシアと戦うにはNATOの武器支援が不可欠という事情がある。日本に首脳が集まるなら日本に来て各国首脳に武器や戦後復興の支援を頼むとしても不思議はない。日本は武器支援は無理でも復興支援は行うし、日本の存在感を高めるために招待してもおかしくはない。

ただ今回のG7は、本来オーストラリア開催だったはずのクアッドも同時開催することになっている。バイデン大統領がアメリカの債務上限問題でオーストラリア行きを中止したからだが、結果G7にクアッドの豪印、加えてウクライナまで集まる「全部込み」のスペシャルサミットになった。

G7最大の議題がウクライナ問題であることは間違いない。そしてインドのモディ首相も来る。ウクライナの大統領と、NATO主要国と、インドの首相が集まることはかなり驚きだ。インドは中国とは敵対してもロシアとは友好を保ち、今回の戦争でもロシアの非難は極力避けてきた。

インドは中立を改めてウクライナ・NATO寄りになるのか?

その可能性も否定できない。インドがロシアとの友好を必要としたのは、エネルギー問題もあるが、最も大きな理由は兵器だった。インドの兵器はロシア製が主要なためロシアとの友好なくしては国防が成り立たない。だが、ウクライナ戦争で、ロシアの兵器がそれほど強力ではなく、物量にモノを言わせなければ西側の兵器に及ばないことがわかった。今後インドが兵器の調達先をアメリカやNATO諸国に入れ替える意志決定をしても不思議ではない。そうであれば、ロシアを切って西側につくことも、ありえない話ではない。

しかしそれはインドにとってあまりにも大きな方針転換だ。調達先を変えると言っても相互に連携して使用される兵器のシステム群を、急に変えるなんて簡単にできることではない。私はインドの「中立主義」は今後も続くと思う。多少、重心を西寄りに変えることはあっても根本的な方針転換はないだろう。

それならばインドとウクライナとNATOが同時に日本に集まる意味は何か。

インドは中立の立場なので、モディ首相は日本でゼレンスキー大統領と握手したあと、極端な言い方をすれば、帰りにモスクワに寄ってプーチン大統領と握手してもおかしくない立場なのだ。

どういう形かはわからないが、いずれウクライナ戦争は終わる。その時には仲介役が必要となる。これまで両陣営の仲介はしばしばトルコのエルドアン大統領が買って出ていた。トルコはNATOの一員でありながら、エルドアン大統領はロシアとも近しいからである。ただ、今後エルドアン政権がどうなるかは分からない。トルコは大統領選挙が決選投票にもつれこみ、どちらが勝ったとしても政情不安になりかねない。

一方、ウクライナとロシアの仲介役は、中国も名乗り出ている。戦争前の中国はロシアだけでなくウクライナとも友好関係にあった。だから仲介役には適任だという自負がある。しかし日本や欧米としては、中国の仲介は受け入れられない。中国は弱体化したロシアと、ウクライナ支援に疲弊した西側諸国を相手にとって、無傷のまま漁夫の利を得ようとしているのが明らかだからだ。

前面に出ようとする中国の対抗馬がトルコでは少し心許ない。中国が大役を果たして世界に栄冠を勝ちとることを防ぐことのできる「西側推しの仲介者」として、大国インドはこれ以上ない適任者だろう。

つまりはこういうことである。

①インドにとって最大の敵は中国だ。だから中国が「世界に冠たる仲介者」の役を果たしては困る。逆にインドがそれをやれば、インドの名声が世界に高まる。これはインドの国益に大きなプラスとなる。このためにインドはロシアとの友好関係も維持し続ける。

②日米など西側としては、ロシアの次はラスボス・中国と向き合う番になる。その前に中国に大手柄を上げさせるわけにはいかない。インドが仲介役を果たして世界で存在感を高めれば、中国の背後を牽制する威力が高まり、日米欧の国益にも合致する。

③それを実現させるには、戦争の当事者であるウクライナが、インドの仲介を積極的に受け入れる必要がある。ウクライナはNATOの多大な支援を受け、今後の国防もNATO頼みになることから、支援継続と引き換えの欧米の頼みは断れないだろう。またここで欧米の対中戦略に貢献しておけば、将来のEU加盟、NATO加盟の念願にも有利に働く。

今回、G7とクアッドを一緒に行ってそこにゼレンスキー大統領まで招くことは、ウクライナ戦争の終わりを見据えた仲介役をインドに任せることで中国の漁夫の利を防ぎ、対中抑止とすることが目的だと私は考える。
つまり今回のG7の議題は、実は対ロシアよりも対中国が本当の中心かもしれない。

ウクライナ情勢がますます緊迫しています。
こういう場合、どの国も「自分たちが正しい」と主張します。真相は国の首脳部しか知らないことなので、どちらが正しいかの議論には興味がありません。一般市民にはそれぞれの陣営が正しく見える情報しか提供されませんし、緊迫した外交、あるいは万一戦争にでもなれば、重要なのは正邪ではなく勝敗だからです。

こちらから見ると、ロシアが横暴に見えます。その仮定で考えてみると、ロシアはなぜ横暴なことをするのでしょうか。

NATOがウクライナまで拡大したらロシアの脅威になる、これは事実です。それを阻止するためにロシアがウクライナを親露政権に変えようと目論むことは十分に考えられます。ウクライナをロシア領にするような高く付くことはしなくても、アメリカがイラクを親米政権に取り替えたように、ロシアがウクライナを親露政権に取り替えて、旧ソ連の時代のようにロシアの衛星国にします。これを西側に対する新たな防壁、かつ前線基地とします。

今、中国が台湾を狙っていますから、アメリカはロシアに多くの力を割くことができません。そのすきに乗じてロシアはウクライナを占領できます。そうなると、欧州の目は台湾から離れ、「ロシアの脅威」に釘付けになります。さらにアメリカがそちらに多くの力を割くようになると、次は中国が台湾に侵攻します。
中国は軍事・経済ともに強力です。一方のロシアは軍事力は強くとも経済が脆弱です。だからアメリカは軍事力では主に中国を睨みつつ、ロシアとは経済制裁で戦うしかありません。しかし、ロシアは当然、中国を経済制裁の抜け道に使いますし、中国もそれに協力するでしょう。

中国は経済の急成長を背景に、軍事力も急拡大しました。今、中国の軍事力のすべてと、アメリカの軍事力のすべてを戦わせたら、アメリカが圧勝します。しかし戦う場所が台湾なら、アメリカは一部分の力しか派遣できません。しかもかなりの部分をロシアへの対応に持っていかれると、米中の力関係は中国に分があります。

しかし中国がアメリカに勝てるチャンスはそう長く続きません。中国経済の足元はかなり危険になっていますし、長期的には中国は今後急速に少子高齢化が進みます。中国が台湾を統治するという悲願を実現しようとするなら、いつまでも待ってはいられません。

こうした状況から、中露が互いに手を組んで欧米を釘付けにし、ロシアがウクライナを、中国が台湾を奪うという作戦が成り立ちます。

日本もそれを最も警戒しているでしょう。

ただ、今回の問題、欧米と中露のどちらが先に仕掛けたかというのは、真実は双方の陣営の中枢しか知りません。岸田総理すら知らないことが多いでしょう。

もしも逆に欧米が仕掛けたとするなら、どういう狙いでしょうか。先に大軍を動かしたのはロシアですが、欧米が先に仕掛けたと仮定するなら、ロシア軍は誘い出されたことになります。何に誘い出されたかというと、言うまでもなく「ウクライナのNATO加盟の合意が近い」という情報によってです。

では仮に欧米が仕掛けた危機だとすれば、その目的は何でしょうか。

まず、これほど大規模に集結させたロシア軍が手ぶらで撤退するなら、プーチン大統領は国内で面目を失います。プーチン大統領が求心力を失えば、それはそれで欧米の勝利です。

また、戦争になった場合どうでしょう。ロシア軍は、米軍を含めたNATO軍よりも強力でしょう。米露も、それぞれ全力を比べたらアメリカのほうが上ですが、やはりアメリカはロシアに対して全力を使うことはできません。使える戦力を比較するなら、ロシア軍が上です。

ところがやはりロシアは経済が弱点になります。戦争ほど金を食うものはありません。ロシア軍に勝とうとするなら長期戦です。経済制裁と長期戦で、ルーブルの価値は地に落ち、ロシア経済は破綻するでしょう。
そうなると、やはり中国がロシア経済を支えることになります。しかし中国はどこまでそれができるでしょうか。

新型コロナの初期、経済不安から各国の通貨の価値が下落して、金相場が急騰しました。ところが、いよいよ未知のウイルスが世界中で猛威を振るってくると、金相場すら下がってドルが上昇しました。長期的な資産としては金にまさるものはありません。しかし、決済にはドルが必要です。決済通貨としてのドルが、本当にパニックになったときには強いことが、コロナ第1波のときに証明されました。

戦争ともなれば、ルーブルの価値は下落します。そして、アメリカが本気で金融制裁をすれば、中国の元相場ももちません。アメリカ経済も弱くなっていますが戦時にはドルが逃げ場になって強くなります。つまり中露は戦費の調達ができなくなります。

このまま中国を増長させればアメリカの覇権が危うい。ならば今のうちに潰しておこうと考えるなら、欧米から先に仕掛けることもあり得ます。どういう経緯であろうと新型コロナウイルスは武漢から出ていて、中国の失策で世界に広まったわけですから、欧米がその報復と今の秩序の維持のために多少の犠牲を覚悟で中露を相手に仕掛ける、という可能性もあります。

真実はわかりません。しかし、大切なことは、どちらが仕掛けたことであっても、勝たなければ意味がないことです。日本は欧米側の国ということははっきりしています。だから、どちらの言い分が正しいかなど関係なく、欧米側のメンバーとして勝たねばなりません。

日本と中国が一対一で戦えば、日本は勝ち目がありません。日本が勝つには、どうしてもアメリカの大きな支援が必要となります。しかしそのアメリカはヨーロッパにも力を分散しているのです。どうしても必要なアメリカの支援が、実際どれくらいのものになるかは未知数なのです。

アメリカの支援が未知数なら、日本は安易に中国と対決できません。日本は欧米側の国というのは明確ながら、中国と性急に正面衝突はできない立場です。一部の人は、日本もすぐに強力な経済制裁に参加しろなどと勇ましいことを言いますが、欧州へのLNG支援で国内の燃料高がさらに進む危険が出てくると、どうもLNG支援に諸手を挙げて賛成しなくなります。
軍事的であろうと経済的な範囲にとどまろうと、日本が欧米側について中露と喧嘩するなら、相手に痛みを与えて自分は全く痛まない、ということはありえません。

日本は欧米側の国ですから、欧州にLNGをできるだけ支援しなければなりません。それが欧州を助け、ロシア経済に痛手を与えることになり、ロシアの戦争継続能力を削ります。ウクライナでロシアの力が弱まれば、アメリカはそれだけアジアに大きな力を向けることができるようになり、中国への抑止力も高まります。

欧州諸国は、台湾よりもウクライナに力を入れます。日本はウクライナよりも南西諸島に力を入れます。基本的な配置はそうなりますが、LNG支援は、ロシアへの牽制を通して中国への牽制にもつながる一手です。大きな一手とは言えませんが、日本がウクライナ問題に関与しつつ南西諸島に備えるという重要な意思表示です。

今は、いつでもロシアが侵攻開始できる状況ですが、実際に侵攻するかどうかは分かりません。もしもプーチン大統領が「勝てる」と見込めば、北京オリンピック閉幕直後にでもゴーサインを出すでしょう。今のウクライナはNATO加盟国ではないので、ロシアが侵攻しても同時にNATO軍が進軍するわけではありません。あくまでもロシアに対しては経済制裁と金融制裁でしょう。

日本がロシアを怒らせたら北方領土交渉が停滞するから、という穏健理論は全く的外れです。ロシアは領土を返す気はありません。ただ、返すかもしれないというパフォーマンスで日本の譲歩を求め続けるだけです。
北方領土がもし本当に返ってくることがあるとすれば、それはロシアに譲歩して友好を保つことではなく、ロシアのほうから領土交渉をしなければならなくなるくらい、少なくともエリツィン大統領の時代くらいまで、ロシア経済が追いつめられた時です。

ただ、日本は北にロシア、南西に中国という二大国に近いことから、景気の良い勇ましい論調に流されてはいけません。欧米側の国として立場をはっきりさせながら、同時に、矢面に立たない現実的で冷静な外交が必要です。

衆院選が終わりました。私も投票に行きました。日曜の夜は、ず~っと選挙特番を見てました。
敗色濃厚の報道が多かった自民党が意外に勝ってしまったので驚きました。以下、私なりの総括です。


①自民党・公明党は想定外の大勝利、ただし甘利と石原が痛い
自民党は選挙前に、公明党と合わせて過半数(233)を目標としていました。ただしこの目標は、負けたことにならないためにハードルを低く設定しているのが明らかでした。
私としては、自民党単独で過半数に届けばとりあえず勝利、公明党と合わせて絶対安定多数(261)に届けば十分な勝利と考えていました。

結果は、この「十分な勝利」をさらに超え、自民単独で絶対安定多数を確保しました。前回より議席は減りましたが、前回が異常に取りすぎていた状態だったので、減っても自公は大勝利と言えるでしょう。自民党は減りましたが公明党は増えています。

しかし手放しで喜ぶことはできません。甘利・石原という大物2人が負けたことです。甘利氏は現職の幹事長なのに負けるという恥をかきました。また、石原氏も、派閥のトップでありながら負けました。甘利氏は幹事長を辞任しますが、「石原派」のほうはどうなるのでしょうか。甘利氏は比例復活できたので引き続き議員ですが、石原氏は復活できずに落選しました。

また、自民党は大阪で総崩れになりました。大阪が維新の天下なのは最初から分かっていても、これほどまでに自民が壊滅するのは予想以上。いかに大阪で自民の信用がないかを露呈しました。自民は、全体で勝ったと喜ぶよりも、今後大阪でどうするかを根本的に練り直さないといけません。

岸田総理としては、甘利幹事長の敗北が非常に大きな痛手ではあるものの、議席数全体では十分すぎる大勝利なので、政権としては揺るがないでしょう。


②立憲民主党が一番の敗者
立民は今回の選挙に勝つために、理念の異なる共産党と協力するという非常手段に訴えました。にもかかわらず議席を大きく減らしました。共闘相手の共産党もやや減っており、野党共闘は失敗したと言うしかありません。

上にも書いたように、甘利・石原という自民党の大物を倒したことは大きな戦果です。これらをはじめとして、野党共闘が力を発揮した選挙区も少なからずありました。負けた選挙区でも、これまで大敗していた場所で大接戦に持ち込んだところもあります。共闘効果で自民候補を追いつめたもののあと一歩届かず、というところが目立ちました。

しかし、基本理念の異なる共産党との協力がマイナスに働いて、逆に票が逃げた感もあります。結局、反自民の票が立民に流れてくれず、維新が受け皿になってしまいました。

自民は甘利・石原の敗北が痛手でしたが、立民は辻元・小沢の敗北が大きいです(小沢氏は比例復活)。辻元氏は立民の副代表で、自公政権を追及するときの「顔」でした。それが、自民ではなく維新の候補に敗れたのが、今回の選挙を最も象徴している気がします。また、「小沢王国」と呼ばれた岩手で「王」の小沢氏が負けたというのは、立民にとって痛手であるばかりでなく、政治の世代交代を象徴するできごとでもあります。このことは、二階氏、麻生氏など今回勝った自民党の老先生方も他人事ではありません。

また、枝野代表自身も、勝ったとはいえギリギリで、責任問題になっています。立民が野党第一党として今後も野党をリードする構図自体に変化はないものの、枝野体制は大きく揺らいだといえますし、与党追及の力も鈍ることが予想されます。


③笑いが止まらない維新、だが…
今回の選挙で一番の勝利者が維新です。これまでの4倍近く議席が増えました。インタビューを受けている松井代表も口元が笑ってましたw
大阪を徹底的に制し、「畿内の与党」というべき強さを見せたのみならず、他の地方にも勢力を拡大しました。これまで維新は大阪の地域政党から今ひとつ脱しきれないことが弱点でしたが、今回この弱点の克服に成功しました。

ただし課題もあります。今回の大勝利は、立民が共産との共闘で左傾化し、保守・中道で反自民の人たちの受け皿になれなかった漁夫の利の側面もあり、これが維新の本当の実力かどうかまだわかりません。


④今後の政権運営について
甘利氏などの無視できない痛手は被ったものの、とりあえず岸田政権は十分にこの選挙を乗り切りました。自民党としても、支持率の落ちた菅前総理から岸田総理に乗り換えて、盛り上がってるうちにすぐ解散という作戦が成功したことになります。
ただ、これはコロナが落ち着いていて政権批判が弱まっているというタイミングの勝利でもあります。今後、第六波がきて、その規模によっては、「自民に投票したのは間違いだった」という人が続出し、支持率が一挙にダウンする可能性も大いにあります。今回の選挙は、タイミング的な自民の作戦勝ちと、対抗する立民の戦略ミスの結果であって、本当に与党がここまで信任された結果とは言えません。

一方で、自民公明の与党に、大躍進の維新を加えると全体の3分の2をはるかに超えることで、政権運営がスムーズになる面もあり、憲法改正の議論などもやりやすくなります。今後の自公政権は、維新が敵に回っても大きな支障がないうえ、維新が味方になる案件では無敵になります(自公維の3党合計では選挙前よりも増えている)。また、国民民主も増えていることから、自公政権にとっては話しやすい野党が増えたことになります。

今回、自民党が減ることは間違いないと見られていた中で、減り幅を最小限に抑えたうえ、交渉しやすい野党が躍進しました。とは言っても自民党に人気があったわけではないので、案外、壊れる時はもろいかもしれません。来年の参院選のときは構図が一変しているかもしれません。下手をすると、岸田政権の寿命もまた1年で終わり、もあります。
また、今後は「維新が非自民の本格的な受け皿になれるかどうか」も大いに注目です。

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