~「高く長く使う」か、「安く短く換える」か~

PC486NA/S2を放棄してから、しばらく私のPC歴には空白期間がありました。時間的にも環境的にも、それどころじゃなかったという感じです。

その後、ひと息ついてから、いよいよWindows95マシンを購入しようとしました。かつての「NEC王国」はとうに崩壊し、本家のNECが細々とPC9821シリーズを売っていましたが、もうそんな時代ではありません。

私が二代目のメインマシンとして選んだのは、富士通のFMV-DESKPOWER SⅣ207でした。
機種としてはSⅣ205に次ぐ「下から二番目」ですが、メインメモリの標準32MBを最初から64MBに倍増させたこともあり、私のPC購入歴で最も高価な、28万円を超えるマシンになりました。
もちろん、それだけ長く使うつもりでした。

CPUは、MMX Pentium200MHzです。当時のCPUの序列は、上位にPentiumⅡ、下位にMMX Pentium、廉価の一部に旧世代のDX4が残っている状態で、スペック的には「下の上」くらいでした。メモリを増やしてあるので全体的に「中の下」といったところでしょうが、それでも28万円でした。
CRT画面は17インチで、最大1280×1024ドット(SXGA)表示が可能でしたが、最大表示にするとやや負荷が重くて画面がチラつくので、実用解像度は1024×768ドット(XGA)でした。

これで性能的には十分、のはずでした。ところが、のちに仕事を持ち帰ってこれを使うようになると、3.2GBのHDD容量があっという間に逼迫しました。仕事もありますがプライベートでもデジカメを購入し、写真を保存するようになると、3.2GBなどたちまち埋まってしまいました。

当時の私に、自力で内蔵HDDを交換する度胸はありません。どうにか外部にデータを保存しようとしましたが、方法がありません。まさか1.44MBのFDDで画像の管理はできませんし、光学ドライブはCD-ROMで、書き込みできません。USBのバージョンは1.0で、外付けの記憶装置に対応していませんでした(外付け機器にデータ保存ができるようになったのはUSB1.1から)。購入時に、ISA拡張スロットにSCSIボードを増設しておけば良かったのですが、購入時にはそんな想定はありませんでした。

方法を探してやっと見つけたのが、zipドライブです(ファイル圧縮形式のzipとは無関係)。FDDを分厚くしたような感じで、1枚あたり250MBの保存ができ、しかもパラレルポート(プリンタ接続用)でデータのやりとりができます。これで一時はしのげましたが、しかしzipディスクは非常に高価で、とても数多く買う気になれませんでした。

そんなわけで、マイPC史上最高額で購入したマシンは、わずか2年で放棄するはめになりました。


PC業界の発展はすさまじい速さで進みます。高価なマシンを買っても長く使えないなら、逆に安いマシンを短いサイクルで買い換えるほうが得策だ。
そう考えて購入した第三代メインマシンが、SOTECのPC STATION M250Aでした。Windows98SEです。

特徴は何よりも安さで、11万円ほど。先代の半分以下です。CPUはCeleron500MHz。本当はPentiumⅡ500MHzが目標でしたが、安さ優先で廉価版CPUにしました。また、書き込み可能なCD-RWドライブが欲しかったところでしたが、読み込み専用のDVD-ROMで妥協。その代わり、ISAに代わる新規格のPCIスロットにSCSIボードを増設して拡張性を確保したほか、メインメモリも標準64MBを128MBに倍増させました。

安いマシンで、プレインストールされているソフトがほとんどないことや、評判の良いWindows98SEということもあって、起動も早く動作も安定して、廉価モデルとは思えない使い心地でした。CRTディスプレイやスピーカーは、先代のDESKPOWERの付属品のほうが高品質なので、そちらをつなぎました。
画像データは、SCSI接続のMOドライブに保存することにしました。

ところがすぐに安物ぶりが露呈します。

まず購入3週間で、CPUの冷却ファンが異常振動を起こし、飛行機に乗っているような騒音を立てるようになったこと。MOドライブが謎のエラー(クロスリンク)を起こし、保存していたデータの半ばが消失したこと。購入後1年で、内蔵HDDが物理的に異常をきたし、読み書きできないセクタが次々と発生したことです。やはり安物でした。

その代わり、安物だからといろいろ思い切っていじってみることもでき、スキルアップには役立ちました。CPU冷却ファンとHDDは交換し、MOについては、残ったデータを外付けHDDに移しました。どうやら問題はここまでだったようで、これだけの対策であとは見違えるような安定動作に入ります。

このころ私は自宅と実家の往復生活をしており、タワー型のPC STATION M250Aでは、実家でパソコンができません。そこで初めて、サブマシンの購入を検討するようになりました。安物は安物なりに苦労したので、サブマシンの条件は、信頼できること、高価ではないこと、持ち運べること、そしてメインマシン代替レベルの機能と性能を持つことです。

こうして購入したのが、NECのLaVie M PC-LM600J62DRでした。値段は約17万円、性能的にもメインのPC STATIONを上回るマシンです。しかしこれはあくまでもサブ用途です。持ち運び用なので、12.1インチ液晶の小型ノートPCでした。このマシンは数奇の運命に見舞われます。

PC STATION M250Aはその後、購入から約2年でメインマシンの座を譲ることになりましたが、メインを下りたあとも、サブマシンとして数年間活躍しました。安いうえにしばらく使ったマシンなので、下手をすると動作不安定を招きかねなくてメインマシンにインストールしたくない体験版などを遠慮なくどんどん入れる「乱雑に使うマシン」として非常に重宝しました。

最も高価なマシンよりも長寿命で活躍した廉価マシンとなりました。